電脳ラボ

脳のコンピュータモデルに関する論文のレビューなどを細々と続けていこうと思います。

統合失調症と報酬予測誤差

統合失調症の病態は十分に理解されていませんが、D2拮抗作用のある薬剤が効果を示すことから、ドーパミンが病態に関与すると考えられています。

DSM-5で診断根拠となる所見は、幻覚(頻度が高いのは幻聴)、妄想(頻度が高いのは被害妄想、一次妄想としては妄想気分、妄想知覚、妄想着想)、まとまりのない発語、ひどくまとまりのない行動、陰性症状となっています。しかしこれらの症状から直接病態を考察するのは難しい印象があります。

統合失調症で知られている所見として、「自分で自分をくすぐってもくすぐったく感じる」というものがあります。また、先行する弱い感覚刺激によって、強い感覚刺激による驚愕反応が抑制される、prepulse inhibition(PPI)という現象があるのですが、統合失調症の患者さんではPPIが減弱する(驚愕反応があまり抑制されない)ことが知られています。

統合失調症に特徴的な幻聴も、自らの思考を外部からの刺激のように体験するものと考えられています。

これらの共通するのは、統合失調症では「予測に基づく抑制が働かない」ということではないでしょうか。幻聴についても、自らの思考であれば「予測可能なもの」として、過度に反応しないのが正常ですが、その機構が破綻することで自らの思考すらも「予測不能なもの」として体験されるのではないでしょうか。