電脳ラボ

脳のコンピュータモデルに関する論文のレビューなどを細々と続けていこうと思います。

Focus on the positive: Computational simulations implicate asymmetrical reward prediction error signals in childhood attention-deficit/hyperactivity disorder

Jeffrey Cockburn, Clay B. Holroyd

Brain Research (2010)

 

アブスト

 

ADHDドーパミンphasicな放出の異常によるものだと言われている。

 

我々はTD(λ)モデルを作成し、

 

 

〈イントロ〉

 

ADHDは最も一般的な発達障害で...

3-7%の人がADHDだと見積もられている。

行動に見かれる症状は、まだあまり理解・制御ができていないが、運動の亢進、物体の操作の亢進、座っていることの困難、他人の番を待つことの困難などが共通して見られる。

ADHDは典型的には…

長期的な研究によると、ADHDの子供の…%はその後も…

深刻なケースでは…

 

ADHDの無謀な行動は前頭葉の障害と類似している。

 

ADHDの症状は、大まかには実行制御機能の障害と分類される。

しかし長年の研究にも拘わらず、ADHDの神経生物学的モデルは確立されていない。

一つの例外は中脳ドーパミン系の機能不全に関する研究である。

ドーパミン系の機能不全だという考えは、ドーパミンアゴニストがADHD症状を和らげることからきている。

ただそういった薬剤は、健康な人に投与するとADHD様の症状を引き起こす。

また、ドーパミン系の機能不全を示唆する別の知見として、ドーパミンの受容体や輸送に関する遺伝多型に関する研究がある。

最後に、長年の研究によりADHDの子供の強化学習の異常が示されており、これは中脳ドーパミン系が担っていると考えられている。

 

 

1.1. 中脳ドーパミン

 

他の神経伝達物質とは異なり、ドーパミンはシナプス後細胞を単純に興奮または抑制するというより、標的とその状態に応じて神経調節物質として働くと考えるのが適当である。

ゆえに…

ドーパミンはまた前頭葉や基底核でのLTPLTDを促すと考えられている。

これらの部位で結合が強められるのは、シナプス前、シナプス後、ドーパミン細胞が同時に興奮した場合である。

 

中脳ドーパミン系は二つの活動の型がある。

phasictonicである。

 

 

1.2. ADHDドーパミン機能不全

 

ここ10年ほど、ADHDドーパミン機能不全を関連付けるいくつもの仮説が出た。

大部分は、phasicドーパミン放出に着目したものである。

しかしまだ合意は十分得られていないので…

 

ADHDの治療に用いられる薬物の動態に基づいて、GraceらはADHDphasicドーパミンの過剰によるものだと主張した。

細胞外のドーパミンは自己受容体を介してドーパミン細胞の発火を強力に抑制する。

この立場から考えると、細胞外のドーパミン濃度が異常に低いと、ドーパミンの過活動が起こることになる。

強化学習のモデルに従うと、これは非常に大きな報酬の予測をもたらすことになる。

 

SeemanMadrasも、ADHDドーパミンtonicphasicの関係に基づくという仮説を提案した。

しかし彼らはシナプス間隙のtonicphasicの濃度の差が重要だとしている。

この提案は、メチルフェニデートのような薬物が、シナプス間隙のドーパミン濃度をphasicドーパミン放出よりもはるかに増加させるという知見に基づいている。

ベースラインの増加?

ADHDphasic(報酬予測誤差)が大きすぎるのが問題

 

一方Volkowは対照的に、ADHDドーパミンのバースト発火が障害され、phasicドーパミンが減少し、正の報酬予測誤差が減少するからだとしている。

これは、メチルフェニデートなどがDATのおよそ50%を占め、自己受容体の抑制を打ち消すのに十分あだという知見に基づいている。

この観点では、健常者の薬物の使用は、tonicphasicのバランスを崩し、phasicドーパミンの放出に中毒様の症状を来す。

この例ではADHDphasicな放出の減少に起因し、また細胞外の濃度の上昇に関連する。

 

Sagvoldenらの動的発達(DD)理論もかなり注目されている。

彼らはphasicドーパミンの減少が報酬期待に基づく学習を損ね、ベースラインの上昇が消去を困難にすると論じている。

 

最後に、TrippWickensによるドーパミン転移障害(DTD)仮説では、未来予測に関わるドーパミンの問題だとしている。

一次強化子から二次強化子への(ドーパミン反応性の)転移の不全だという話。

 

ドーパミンphasic信号の異常が行動にどのような影響を与えるか調べるために、我々は2つのFI/EXT課題のシミュレーションを行った。

一つはADHDのラットモデルを用いたもので、通常のラット比較し、多動や衝動性を示す。

もう一つは薬物治療前のADHDの子供を対象にしたもので、課題の最初は健常児と同じ行動を示すが、課題の進行に伴って多動や衝動性を示すようになる。

 

我々の目的は…なので、phasicドーパミン(報酬予測誤差)のみに焦点を当てた。

もちろんtonicドーパミンNivとか)やtonicphasicの関係や他のカテコラミンも関係しているだろうが…

 

 

上記の5説のまとめ

 

GraceADHDは報酬予測誤差が大きい→リタリンにより細胞外DAが増えると抑制

SeemanMadrasADHDは報酬予測誤差が大きい→リタリンにより細胞外が増えて相対的に減少

VolkowADHDは報酬予測誤差が小さい→リタリンにより自己受容体が阻害されて?発火頻度↑

SagvoldenADHDは正の報酬予測誤差が小さく、負の報酬予測誤差が大きい

TrippWickensADHDドーパミンの反応性の転移が障害される。

 

 

〈リザルト〉

 

動物シミュレーション

Multi-FI/EXT

Fixed Interval(一定時間経過後の最初のレバー押しで報酬)

extinction(報酬なし)

 

SHR系統:動物のADHDモデル

Sagvoldenら(1992)によるSHR系統と通常の系統の同タスクでの実験結果を参照

 

McWKYの行動に合致するようにパラメータ調整。

それ以外は特定のパラメータのみ変化させる。

それがADHDモデルの行動に近いか?

 

まずM_αというモデルを作成した。

これは学習率が小さく、絶対的な報酬誤差が小さくなる。

 

次にM_ωを作成した。

これは正と負の予測誤差のスケールが対照(同じ)ではない。

 

最後に、M_γλモデルを作成した。

 

これは割引因子または責任割り当てが変化するので、

 

2.2. 子供のシミュレーション

 

 

…基本的にどちらのケースでも、報酬予測誤差を小さくした場合と、パラメータを全般的に小さくした場合でADHD様の行動を示すようになるという。

 

ちなみに「α:アセチルコリン」という解釈ではなく、「α:絶対的な報酬の大きさ」という解釈のようだ。

 

 

〈ディスカッション〉