ADHDにドーパミンが関与していること自体は広く受け入れられているが、その関与がどのようなものかに関しては諸説ある。
以前読んだ総説やモデルの論文(例えば http://m6chin9h96d.hateblo.jp/entry/2013/07/03/204331 )を参考にまとめてみる。
Grace
ADHDがphasicドーパミンの過剰によるものだと主張した。
細胞外のドーパミンは自己受容体を介してドーパミン細胞の発火を強力に抑制する。
この立場から考えると、細胞外のドーパミン濃度が異常に低いと、ドーパミンの過活動が起こることになる。
強化学習のモデルに従うと、これは非常に大きな報酬の予測をもたらすことになる。
Grace, A.A., 2001. Psychostimulant actions on dopamine and limbic systemfunction: relevance to the pathophysiology and treatment of ADHD. Stimulant Drugs and ADHD
SeemanとMadras
ADHDがドーパミンのtonicとphasicの関係に基づくという仮説を提案した。
しかし彼らはシナプス間隙のtonicとphasicの濃度の差が重要だとしている。
この提案は、メチルフェニデートのような薬物が、シナプス間隙のドーパミン濃度をphasicなドーパミン放出よりもはるかに増加させるという知見に基づいている。
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ベースラインの増加?
ADHDはphasic(報酬予測誤差)が大きすぎるのが問題。
Seeman, P., Madras, B., 2002. Methylphenidate elevates resting dopamine which lowers the impulse-triggered release of dopamine: a hypothesis.
Volkow
ADHDはドーパミンのバースト発火が障害され、phasicドーパミンが減少し、正の報酬予測誤差が減少するからだとしている。
これは、メチルフェニデートなどがDATのおよそ50%を占め、自己受容体の抑制を打ち消すのに十分あだという知見に基づいている。
この観点では、健常者の薬物の使用は、tonicとphasicのバランスを崩し、phasicなドーパミンの放出に中毒様の症状を来す。
この例ではADHDはphasicな放出の減少に起因し、また細胞外の濃度の上昇に関連する。
Volkow, N.D., Wang, G.J., Fowler, J.S., Ding, Y.S., 2005. Imaging the effects of methylphenidate on brain dopamine: new model on its therapeutic actions for attention-deficit/hyperactivity disorder.
Sagvolden
動的発達(DD)理論。
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彼らはphasicドーパミンの減少が報酬期待に基づく学習を損ね、ベースラインの上昇が消去を困難にすると論じている。
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Sagvolden, T., Johansen, E.B., Aase, H., Russell, V.A., 2005a. A dynamic developmental theory of attention-deficit/hyperactivity disorder (ADHD) predominantly hyperactive/impulsive and combined subtypes.
TrippとWickens
ドーパミン転移障害(DTD)仮説では、未来予測に関わるドーパミンの問題だとしている。
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一次強化子から二次強化子への(ドーパミン反応性の)転移の不全だという話。
Tripp, G., Wickens, J.R., 2008. Research review: Dopamine transfer deficit: a neurobiological theory of altered reinforcement mechanisms in ADHD.
Sergeantの認知エネルギーモデル
Sanuga-Barkeの二経路モデル
Dayanらは計算モデルを提案