私自身、(近接領域の研究をしていましたが)元々学習心理学は専門でなく、ウェブ上やブックガイド的な本に書かれているリストを参考に、学習心理学の勉強を行いました。
現在でもまだ知識は不十分なのですが、その分野の論文がある程度理解できるようにはなったので、そのレベルまで到達するのに役に立った文献を紹介しようと思います。
学部生などで語学力があり、時間も十分にあるのなら欧米の教科書の原著を読むと力がつくとは思うのですが、ここでは近接領域の研究をしながら、あるいは他の仕事をしながら学ぶ人のために、なるべく日本語で書かれた、コンパクトにまとまっている本を挙げようと思っています。
学習心理学と銘打った本も中にはありますが、行動分析といったタイトルで学習心理学の基礎から(レスポンデント条件づけも含めて)解説している良書もあるため、それらも含めて挙げることにしました。
学習の一助になれば幸いです。
学習の心理―行動のメカニズムを探る (コンパクト新心理学ライブラリ)
- 作者: 実森正子,中島定彦
- 出版社/メーカー: サイエンス社
- 発売日: 2000/06/01
- メディア: 単行本
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わかりやすい入門書だと思います。
『図解雑学』というシリーズがありますが、それと似た形式で、左ページに文章による説明が、右ページには図による説明が書かれています。
章ごとに参考図書が挙げてあるので、各章の内容をさらに詳しく勉強したいとき役に立ちます。
また引用されている研究については、元の論文が巻末に掲載されています。
図のページ、引用文献、索引等含めて200ページほどなので、短時間で学習心理学について概観できると思います。
- 作者: ジェームズ・E.メイザー,James E. Mazur,磯博行,坂上貴之,川合伸幸
- 出版社/メーカー: 二瓶社
- 発売日: 2008/06/01
- メディア: 単行本
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有名な学習心理学の教科書です。
学部生向けに書かれた本だと思いますが、基礎から応用事例まで幅広い内容を扱っています。
古典的条件づけとオペラント条件づけの話題が中心ですが、メイザー自身が専門とする選択行動についても一章を割いて解説してあります。
基礎的な研究の話に多くのページが割かれていますが、応用行動分析のような応用事例の話題もところどころに出てきます。
また馴化と古典的条件づけに関しては、その行動の神経機構についての仮説も紹介されています。
個人的にはオペラント条件づけやRescorla-Wagnerモデルの神経機構として、Wickensの研究やSchultzの研究も載せて欲しかったところですが…今後の改訂に期待します。
この本も優れた学習心理学の入門書だと思います。
条件づけの話に入る前に、数章を割いて行動とは何か、環境変化とは何かなど、初学者が 飲み込みにくい用語について説明しています。
また類似した用語が登場する際には、それらを列挙して違いを説明するなど、読者への配慮が感じられます。
300ページ超ありますが、本のサイズは小さめで文章も比較的平易なので、読みやすいのではないかと思います。
学習心理学における古典的条件づけの理論―パヴロフから連合学習研究の最先端まで
- 作者: 今田寛,中島定彦
- 出版社/メーカー: 培風館
- 発売日: 2003/06
- メディア: 単行本
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古典的条件づけに関してはこの本が詳しいです。
テーマごとにその分野を専門とする日本人研究者による解説が書かれています。
上記のメイザーの本などで基本的な知識が身に付いていれば、そこまで難解な内容ではないと思います。
学習理論について、初期の研究から比較的最近の研究までを扱っています。
十分な知識がないとやや難解な印象を受けますが、広い範囲のテーマについて最近の話題まで紹介されているので、教科書以上の内容を知りたいときに便利だと思います。
この本の内容を消化した上でさらに詳細な知識が必要であれば、総説や原著論文にあたるのがよいのかと。
実験家と臨床家による学習心理学・行動分析学の入門書で、基礎から応用まで幅広い話題をカバーしています。
図表も比較的多く挿入されており、理解が助けられます。
またSTEP UP!の項では、レスコーラ・ワグナー・モデルなどの発展的な内容や、ブライテンベルクの車など関連のある興味深い話題を紹介しています。
- 作者: レイモンド・G.ミルテンバーガー,園山繁樹,野呂文行,渡部匡隆,大石幸二
- 出版社/メーカー: 二瓶社
- 発売日: 2006/01
- メディア: 単行本
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応用行動分析の入門書は有名なものが何冊かありますが、個人的にはこれが一番わかりやすかったです。
『メイザーの学習と行動』と同じく二瓶社から出版されており、本の形式もメイザーのものと似ています。
章末にはまとめや練習問題などがあり、各章の内容を整理するのに役立ちます。
応用行動分析の本としては、基礎となる学習心理学の知見について詳しく書かれていると思います。
すでに学習心理学の本を何冊も読んでいると、以前読んだ本と内容が重複する部分もあるかもしれませんが…新しい内容を学ぶと同時に以前学んだ内容を復習するのも無駄ではないのかとは。
タイトルの通り、行動経済学など経済学寄りの話題もあるのですが、前半は(実験的)行動分析学の話が中心であり、行動経済学の話題も行動分析をベースに解説してあります。
マッチング則から始まり、遅延割引、変化抵抗など、行動分析学の重要な話題が網羅されており、非常に勉強になりました。
後半の意思決定のバイアスの話も、興味深く読めるのではないかと思います。
この本によると学習心理学から行動分析学が派生し、さらにそこから行動経済学に繋がる流れもあるようです。(どちらかというと認知心理学からの影響の方が強い印象がありますが)