電脳ラボ

脳のコンピュータモデルに関する論文のレビューなどを細々と続けていこうと思います。

salienceについて

報酬系神経科学の領域で、salienceやsaliencyという言葉を目にするようになったのは、Kent C. Berridgeのincentive salience仮説以降でしょうか。それ以前から認知寄りの領域では視覚刺激の重要な要素に対して、salience(突起物、目立つもの)という語が使われていたようです。

精神医学の領域ではShitij Kapurのmotivational salience仮説でsalienceという語が認知された印象があります。KapurはBerridgeの仮説を基礎として、統合失調症の病態について説明を試みています。Kapurの仮説に興味を持った方は、ぜひBerridgeの論文にも目を通していただければと思います。

Berridgeの論文は当初から注目を浴びていましたが、定義が曖昧な点がいくつかあり、指摘を受けてBerridgeは数年ごとに自身の仮説を洗練させていったようです。具体的には学習心理学の概念を援用しながら、仮説の定義を明確にしていきました。ただし、初期の論文のインパクトを考えると、定義が明確になった反面、仮説がやや矮小化した印象もあります。